行動することの葛藤と思い

友人たちは政治と距離を置いているように感じる。これまで学校で政治の話をしたことがなく、 授業の中で政治について議論するようなこともなかったと話す T さん。

T さん

「僕たちの年代での関心事は、まず就職。そして生活、経済のこと。どれも、政治と結びつい ている事柄だけど、政治の話まで発展することはない。ましてや、安保法制の話などは実生活 にダイレクトに影響があることではないから、普段の生活の中で話題にならないのは仕方がな いと思う」

崔さん

「僕の周りには、そもそも政治の話を煙たがる人が多い。無関心なのか、意見はもっているけ ど表明したり議論したりする必要はない。完全に自己完結で政治についての意見を終わらせて いる人が多い」

―彼らと同様に県内のさまざまな大学から集まった仲間たちも同じ思いを抱えていたようです。 普段学校では政治や社会問題について話しにくい環境があったといいます。

仲間を増やしたいとの思いが一番だったが、自分たちの意見を押し付けるわけではなくて議論 ができれば。しかし、学習会やデモに友人を誘いたいと思ってもなかなか簡単に声をかけられ ないという葛藤もありました。

崔さん

「逆に親しい友人は誘いづらい。そこを突破できないというか。問題意識を広めるという意味 では突破しないといけないんだけど。高校時代の友人とか、他の大学の友人に声をかけるのは 抵抗があった。そんな話なかなかできない。どこかの政党にはいったと、そういう受け取られ 方をする。

ネット上で悪意ある誹謗中傷を受けたメンバーもいた」

―「一介の学生が首相に偉そうなこと言ってんじゃねえよ」

 「バカすぎる。勉強しろ」

 ネット上で激しい声が寄せられたほか、デモの最中に一部の人から野次を飛ばされたりもし ました。

熊川さん

「地元の友人から、facebook を通してお上のやっていることに口出しするなみたいなこともい われた。感情論だろという趣旨のひたすら長文のメッセージを送ってくる人もいた」

-T さんは、安保法制に反対という思いがあり、意思表示をすることの重要性を感じていた一 方、デモをすることへの抵抗感を最後までぬぐえなかったといいます。

T さん

「なぜここまで批判をされなくてはいけないのか、わからない。社会の中で、自分の意見を言 うこと自体がこんなにも受け入れられない状況にあるのかと思った。

デモに参加すると就職に影響するという話を聞いて、不安な気持ちになったりもしたし、ネッ ト上の批判を見たりする中で、知識不足じゃないかと感じて自信が持てなくなることもあった」

―それでも、デモに参加した理由は、自分の思いを表明したいという気持ちが勝ったことと、 参加する中でこの問題により深く向き合って考えたいと思ったからだと話します。議論して意 見を言える場がある。デモはその延長線だと捉えていました。

 学校で話せる環境がないが、FYM という場を通じて積極的に議論ができるし、自分の意見を ぶつけながら学ぶことができる。

熊川さん

「批判されることもあったけど、それ以上に同級生から応援メッセージをもらうとうれしかっ た。私は批判を気にしててもしょうがないと思っている。言わせておけばいいし、反論するた めにやっているわけでもない。自分の思ったこと、やりたいことを素直にやっていく。なによ りも、自分のことをしっかりと理解してくれるメンバーや、遠くから見守ってくれる家族もい る。だからそうした誹謗中傷は気にならない。

ただ、活動する中で引け目を感じることもあって、私は、自衛隊でもない、奨学金は借りてい るが、就職先も決まっていて返すアテはある。生活がひっ迫しているわけでもない。だからこ そ声をあげられるのかもしれないけど。それと、どのような問題にも当事者がいて、そこをな いがしろにして反対を言うのは違うと思うし、常に頭の中においておかなくてはいけない。正 義感や使命感で『彼らのために活動してる』という感覚で活動してはいけないと思っている。 難しいところ」

―当事者性の薄さと、運動することに対して崔さんは、当事者性の在り方は「グラデーション」 だといいます

崔さん

「そもそも当事者がいて部外者がいるというよりは、当事者度がだんだん薄くなっていくみた いな。グラデーションみたいな感じ。薄いけど何らかの形でつながっている人と、渦中にいて 完全に繋がっている人たちがいるわけだけど、全く関係ない人っていうのはいない。当事者じ ゃない人が関わったり、知ったり、そうやっていかないと世界は変わらない。
 それに今は当事者じゃないけど、いつ当事者に、そのグラデーションが濃くなる方に行くか わからないという点で、それを知ったり聞いたりするのは大事だと思う。今は関心がないと思 っても、見聞きしたことが人生のどこかで芽を出るんじゃないかな」

1 2 3 4
アイポス編集部
アイポスは政治をもっと身近に感じ、生活と政治の関連性を見出す情報を発信します!