「March For Our Lives(私たちの命のための行進)」

 

3月24日、全米約700カ所で高校生をはじめとする100万人が銃規制のために声を上げた。

 バレンタインデーの2月14日、フロリダ州パークランドの公立高校で卒業生が銃を乱射し、生徒15人と教師2人の計17人が犠牲となる痛ましい事件が起きた。


事件が発生した高校の生徒たちは銃規制のために立ち上がったことが契機となり、「March For Our Lives(私たちの命のための行進)」と題したデモは過去最大規模となった。首都ワシントンでは、通りを埋め尽くした80万人の参加者が「Enough is Enough(もうたくさんだ)」と声をあげた。

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2016年にはフロリダ州オーランドのナイトクラブで銃乱射事件が発生して49人が亡くなった。昨年10月にはラスベガスのフェスティバル会場で銃乱射事件が発生し、58人が亡くなったことも記憶に新しい。

相次ぐ銃乱射事件によって多くの人が亡くなっている中、米国では銃規制が進んでいない。

そこには、銃をめぐる米国建国の歴史的な経緯や銃所持に対する自警的なイメージが根強く存在し続けていることが理由としてある。

 また、それだけでなく活発な銃規制反対派の活動も銃規制を困難にしている。

 

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全米ライフル協会(NRA)

個人の銃所有の権利を擁護する団体であり、「銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ」とのスローガンを掲げている。また、NRAは膨大な会員数(約400万人)と資金力(予算2億3000万ドル)を背景に活動し、全米最強のロビー集団の一つと評されている。

 事件が起きたフロリダの高校でインタビューを受けた生徒たちは、NRAによる政治家への献金を痛烈に批判し、銃規制の推進を求めた。

事件を生き延びた生徒たちの悲痛な声だったにも関わらず、生徒たちはこの批判に過激に反応した銃規制反対派から非常に激しい誹謗中傷や殺害予告を受けることになった。

 また、2016年米大統領選でトランプ大統領の陣営はNRAから2000万~3000万ドルの寄付を受けたとされている。

事件の被害者と対談したトランプ大統領は「教師に銃を持たせるべきだ」と言い放った。

 

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こうした状況の中で開催されたのが「March For Our Lives(私たちの命のための行進)」だった。

そして、学生たちは自分たちの命を守るため、「Enough is Enough」「Am I Next?(次に殺されるのは私なの?)」のコールとともに、「NRAから金を受け取る政治家を選挙で落とそう」と声を上げた。

そこには著名人や有名企業からの多くの支援が寄せられた。

スティーブン・スピルバーグやジョージ・クルーニー、テイラー・スウィフト、名だたる著名人がデモに援助金を出した。

そして、デモ参加による進学の影響を危惧する学生に対して多くの大学が「入学に悪影響を与えない」とする宣言を出して運動を後押しした。

 

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多くの学生たちが声を上げ、それを米国社会が支え始めたことによって、これまで銃規制が進まなかった米国が少しずつ変わり始めている。

米第2位の資産規模を持つ大手銀行が銃器製造業者との関係を見直す声明を出したほか、大手航空会社がNRA会員に対する優待サービスを取りやめる等、NRAや銃器製造業者との関係を見直す民間企業の動きが広まっている。

 また、フロリダ州では銃規制を強化する法案に州知事が署名し、全ての銃の購入可能年齢を18歳から21歳に引き上げた。フロリダ州での銃規制強化は20年ぶりだという。

 相次ぐ悲惨な銃乱射事件を受けても何も変わらなかった米国社会が、勇気ある学生たちが立ち上がって声を上げたことを契機に少しずつ変わり始めている。

アイポス編集部
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