今日は中国についてお話をしますが、僕自身と中国との関係はそれほど長い付き合いではありません。初めて中国に行ったのは、10数年前、弁護士になって1年目の時に、事件の関係で北京に行ったのが最初です。その時の事件は中国人強制連行事件でして、福岡県がまさにその現場ですね。三池や筑豊、福岡市近郊の炭鉱に中国の青年たちが連れてこられて働かされたという事件です。あの事件を担当しました。それで初めて北京に行って、僕にとっては初めての海外旅行だったのですが、本当にびっくりして、10代の時に来ておけばもっといい人生が歩めたのにと思いました。本当に井の中の蛙だったなと思いました。北京に行きますと、「ああ、ここが世界の中心なんだ」と思いますね。北京の人は自分たちが世界の中心にいると思っていますからね。行ってみますと、京都とか、韓国のソウルとか、そういう都市は中国のミニチュアなんだと思えてきます。それくらい大きな都市ですね。

 

感情を抜きにして、データを素に考える

 

 中国脅威論というのは本当かというお話です。天神でスタンディングをしていると、反論を仕掛けてくる人はだいたい「そうは言っても中国が攻めてきたらどうする」という話をします。そして決まって50代から60代の男性ですね。ちなみに20代前半くらいの青年が同じ質問を僕にしてきたことがあります。彼に、今日これからお話しするような内容をかいつまんで説明したら、「そういうことだったんですね。誤解していました。安保法は中国と戦争することに備えるための法律だと思っていました」と納得してくれました。ところが50代60代の男性にこういう説明をすると、「嘘をつくな!」と言うのですね。あきれてしまいますね。頭が固いというか、この世代は本当にややこしいですね。この世代のグループが焼鳥屋に行くと、いくつかあるグルーのうちの1つくらいは中国脅威論とか、「今度は韓国に勝つ」とかいう話をしているんですよ。「勝つ」などといっても、こんなおじさんが鉄砲担いで戦争に行くわけではないんですよ。行かされるのは自分の息子たちなのに、そういう想像力が全くない。そういう想像力もない連中が、ビールを飲みながら、「中国が攻めてくる」とか「今度は勝つ」とか話している。ふざけるなと思います。彼らが中国脅威論の話をする時は、感情の話なんですね。ですから今日は感情を抜きにして、客観的な数字でお話をしたいと思います。

 基にしたデータは、「データで読み解く中国の未来―中国脅威論は本当か」(川島博之著)という本です。この本は農水省の元官僚が書いた本です。彼が引用しているデータは、政府が統計したデータです。

 

世界の中での日本の位置を直視しよう

 

 前提として、日本という国は世界の中でどういう位置を占めているかということです。外国から原料や燃料を輸入してくる。日本は資源が少ないといわれています。原料や燃料を輸入して、日本の国内にある工場で加工して、製品にして外国に輸出する。安く輸入して、付加価値を付けて高く輸出する。この差額が貿易の黒字ですね。ここで利益が出るから日本は成り立っている。加工貿易の国といわれています。

 それでは現実はどうか。加工貿易の国ですから、輸入額より輸出額が上まわっていないと国は成り立たないのですね。グラフ(図1-1)%e5%9b%b31%ef%bc%8d1を見てください。輸出額、輸入額とも順調に伸びていましたが、ここでガクンと下がります。これは2008年のリーマンショックですね。リーマンショックの影響は1年で持ち直します。ところが2013年に東日本大震災があって、この年から輸出額と輸入額が逆転します。輸入額が大きくなる。原発事故の影響で、石油や天然ガスを輸入しなければならなくなったためでという説明ですが、その影響は一時的でしょう。ところがその逆転が広がっているんですね。これが今の日本の現状です。輸出が13%減少しています。貿易赤字が10兆円を超えています。

 次に貿易の相手を地域別に見ましょう(図1-2b%e5%9b%b3%ef%bc%91%ef%bc%8d%ef%bc%92%ef%bd%82)。0のラインから上が輸出で、下が輸入です。輸入先で中東が多いのは、原油ですね。輸出で見ると、ヨーロッパ、アメリカ、アジアが大きなところですが、2012年からヨーロッパ向けの輸出が激減します。ほぼ無くなるくらいに激減します。そして2013年にアジアへの輸出がガクッと落ちます。2014年になると、ほぼアメリカしかないくらいになります。これが今の現状ですね。

 次にGDPの上位4か国、アメリカ、中国、日本、ドイツですが、そのGDPの伸びを見ましょう(図1-3)。%e5%9b%b3%ef%bc%91%ef%bc%8d%ef%bc%93バブルを経験した僕らは、GDP上位というと、アメリカ、日本と思ってしまいますが、今は3位になっています。中国、アメリカ、ドイツは順調に伸びています。特に21世紀に入ってからの中国の伸びはすごいですね。ドイツと日本は、1990年代の半ばまでは、ほぼ同じような動きをしてきました。しかし1990年代半ばから、ドイツは順調に伸びていき、日本はそこから停滞してきて、21世紀に入ると中国に抜かれるとともに、もう追いつけないくらいに差が開いてしまった。僕はこのデータを読んでいて、びっくりしました。日本と中国は僅差くらいだと思っていました。でも今や全く相手にならないくらいです。

 世界の中での地位を見ていくと(図1-4)、1-4ドイツはだいたい一定しているんですね。世界の輸出額の8%くらいがドイツです。アメリカは若干地位が下がっています。それでも10%くらいある。日本はというと、ピークが1980年代の半ばで、この時はアメリカの2/3まで迫りました。これはバブルの時ですよね。アメリカの労働者が日本の車をハンマーで叩いたりするニュースが流れましたよね、あれがこの時です。あの時幻想を抱きましたね、私たちは。このままアメリカを追い抜くんじゃないか。日本の企業がアメリカの映画会社を買収したり、ニューヨークの不動産を買い漁ったりしていました。あれがこの時期です。そこからは坂道を転がり落ちるようにして、沈んでしまった。逆に中国はグンと伸びてきた。今の日本の立場はどのくらいかというと、東京オリンピックの頃、1964年頃の水準です。また東京オリンピックなんかをやっている場合かと思うんですけどね。

 今度は日本と中国の貿易の関係を見ますね(図1-7)。1-7黒い部分は、日本にとっての中国、中国にとっての日本の関係を示しています。日本の輸出額の中で中国が占める割合は、どんどん増加しています。つまり日本にとって中国はとても大事なお客様になっています。全輸出額の18%を中国が占めています。この額がどんどん増えています。

 逆に中国から見た日本はどうかというと、これは減っているんです。12.4%から6.8%に減っている。日本ではない、アメリカやヨーロッパ、アジアの国々を相手にしているのが中国です。これを見てわかるように、日本は勇ましいことを言っているけれども、日本にとって中国はとても大事な国なんですね。こことの関係がなくなれば、日本という国が立ちいかなくなる。それでは逆はどうかというと、逆はそうでもない。これが現実です。

 今まで見てきてわかるように、中国の脅威というけれど、日本が勝手に落ちていっているというのが現状です。どうしても僕らは認めたくない。1980年代の華やかな日本のままでいたいと思うのだけれども、もうあの日本ではありません。グラフでもわかるように、中国にはとっくに追い抜かれている。そればかりか差はどんどん開いているというのが現状です。この現実を見ることが大事だと思います。

中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~②→comming soon!
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~③
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~④
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑤

後藤とみかず
1968年生まれ、47歳。 福岡大学法学部卒、2002年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。