日本とドイツはどこが違うのか

 次にドイツを見ましょう。ドイツと日本を比較するとよくわかる。EUを作ったドイツと、東アジア共同体を作れなかった日本。今まで見てきたように、ドイツと日本は、1980年代半ばくらいまでは似たような動きをしてきましたね。どちらも敗戦国で、敗戦の中から立ち直ってきた国ですけれども、今や全然話にならないくらい差をつけられてしまいました。この違いはどこから来ているのかというと、ひとつはヨーロッパにおけるドイツの地位と、アジアにおける日本の地位の違いではないかと感じました。

輸出額がGDPに占める割合ですが(図1-18)、img_8412ドイツは突出していますね。45%くらい。日本はというと10数%くらい。日本は加工貿易の国ですよね。原料も燃料も、資源を国内で賄える国ではないんです。輸出額が増えないと国は成り立たないのに、日本は増えていないんですね。一方ドイツはこれだけ増えている。

 そして今ドイツは中国ととても仲がいい。独中連合といわれています。習近平さんとメルケルさんですね。ドイツと中国が仲がいいというのは、数字からも明らかですね。ドイツから中国への輸出額、670億€(ユーロ)、ドイツから日本への輸出額171億€。ドイツからしたら、どちらが大事なお客さんですか。4倍も差がある。

 例えば自動車を見てみましょう。中国における自動車のシェア(図)。img_8413フォルクスワーゲン、これはドイツの企業ですが、圧倒的ですね。トヨタや日産はこれくらいです。ドイツ車はフォルクスワーゲンだけでなく、BMWやメルセデスベンツもあります。ちなみに、フォルクスワーゲンという会社は、ヒトラーが作った会社です。ヒトラーが当時、ポルシェ博士に「国民車を作れ」と命令したんです。ヒトラーは公共事業としてアウトバーン、高速道路を整備しました。そして国民が乗れるような車を作ることを命じた。ヒトラーが乗るのはメルセデスベンツですが、国民はそんな車には乗れない。それで国民が乗れるような車を作りなさいとポルシェ博士に命じて作ったのがフォルクスワーゲンです。フォルクスワーゲンというのは国民車という意味ですが、ヒトラーの時代は戦時中ですから勇ましい名前です。歓喜力行団というのですよ。この車を作るために、ユダヤ人や強制連行してきた人たちを働かせています。そんな加害企業ですよ。ヨーロッパ全土に迷惑をかけた加害企業が何故これだけ世界に受け入れられているのか。ベンツもそうですね。ベンツもヒトラーのお気に入りの企業でした。

 これらの企業が世界に受け入れられている理由は、これらの企業がちゃんと謝っているからです。フォルクスワーゲンやメルセデスベンツは、社を挙げてユダヤ人の犠牲者の家族や被害者を探し出して、謝罪して賠償しているんです。その動きに政府も共感して、ドイツでは「記憶責任未来基金」を設立して、今も謝罪と賠償を続けています。これは請求があったら賠償しますということではありません。企業と政府の責任において、見つけていって謝罪のお手紙を渡して、賠償金を払う。そこまでしています。おそらくこの努力がヨーロッパの人々の信頼を勝ち得た。だからかつては自分たちを苦しめた加害企業なのに、世界中で信頼されているのがフォルクスワーゲンやメルセデスベンツなのです。これがドイツの姿勢ですね。

 翻って日本の企業はどうか。基本的に日本は謝罪していないですね。当時の加害企業は謝罪することもなく、今ものうのうと営業を続けています。

 この独中連合によって何が起きているかというと、日本の技術に頼らなくても中国は高性能の製品を作れるようになっているということです。先ほど輸出額の話をしましたが、この話を認めたくない人たちは「そうは言っても、中国製よりも日本製は性能がいいからね」と言います。これは大間違いです。ちょっとした笑い話ですが、僕は環境問題に関する国際会議に出席することがあります。ああいう国際会議に出るとお土産がもらえるんですね。記念のバッグなんかです。10年ほど前に韓国であった会議でもらったバッグ、これは今でも使っています。それから4年後に名古屋で同じ会議があったんですね。その時は民主党政権でしたから、松本龍環境大臣が歓迎レセプションで、お土産の話もしました。「お土産は日本の技術の粋を集めて、職人の技で作りました」と話したのですが、1週間で壊れました。ビックリしました。その後の環境問題の会議なんかに行くと、みんなバッグを持っているんですが、韓国の会議でもらったバッグを持っている人は結構いるんですが、日本でもらったバッグを持っている人は見かけません。

 だからもう幻想にしがみつくのはよそうよと言いたいのです。だって日本は技術者を育てていないでしょう。これだけ技術者をないがしろにして、何が技術大国だ、ということですよ。本当に優れた技術者は外国に行っています。日本の企業ではなくて。

 付け加えて、AIIB、アジアインフラ投資銀行ですね。中国が主導して作った金融機関ですが、ドイツが真っ先に乗りましたね。当然日本も加わるのだろうと思っていましたら、日本は意地になって入らなかったので、取り残されるような立場になっていますね。

中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~①
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~③→12月16日更新
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~④→12月18日更新
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中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑥→12月22日更新

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後藤とみかず
1968年生まれ、47歳。 福岡大学法学部卒、2002年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。