中国の軍事力は本当に突出しているのか

 

 次に「中国脅威論」の時に出る話として、軍事力のことがあります。これを数値で見てみましょう(図6-1)。img_8414軍事費で見ると、確かに脅威的なんです。世界の軍事費では、なんといってもアメリカが突出しています。2位が中国、3位ロシア、日本は8位です。2013年のデータですが。ドイツが7位。日本には軍隊がないはずですよね。でもあの装備はどう見ても軍隊です。

 軍事費は国の国力によって必要になってくるという側面があります。一般的に言われているのは、GDPの2%程度が普通の国の軍事費だといわれています。それで見ると、おおむね各国2%くらいですね。中国はちょうど2%です。だから突出して軍事大国というわけではなくて、普通のレベルです。フランスやイギリスはもうちょっと高いけど、2%台。サウジアラビアが9.3%と突出していますが、これは石油マネーで最新の兵器をジャブジャブ買ってしまうからという側面があります。アメリカはやっぱり異常です。普通の国の倍、軍事費に使っている。日本とドイツが1%台。これはやっぱり敗戦国だからです。この2つの国はかつて世界中に迷惑をかけた国ですから、世界の目は厳しい。日本が2%台になると、アジアの国々から見ると日本は怖い国ですから、脅威に感じる。結論的に言うと、GDPとの比率でみると、中国は決して突出しているわけではなくて、むしろ普通だということが分かります。

 さらに国家予算の中での割合を見ますと、予算が増えて、軍事費の割合が減っているというのが中国です。実はこの逆は日本なんです。今年日本の防衛費、軍事費は、初めて5兆円を超えました。F35ジェット戦闘機6機、1139億円。イージス艦1隻、1649億円。この中の1機削減するだけで、「保育園落ちた」の問題は解決するんじゃないですか。オスプレイ1機100億円を超えています。日本の防衛費はどんどん上がっています。そして今年5兆円を超えました。「中国が脅威だ」と言ってどんどん軍事費を増やしているのは日本なんです。

 自民党政権がこの間、自衛隊が憲法に違反しないと言ってきたのは、自衛隊は軍隊ではない、軍隊はよその国に行って戦争するもので、専守防衛、防衛しかできないものだから軍隊でなくて憲法に違反しないと、こう説明してきたわけです。でも自衛隊に導入しようとしている軍艦、どう見ても空母です。これは外に出て敵を攻撃するためのものでしょう。さすがに空母とは言っていませんが、これはどう見ても空母です。

 

アメリカが仕掛ける戦争に加担するということ

 

 昨年の9月19日、国民の反対の声を無視し、国会をむちゃくちゃに延長してまで、安保法案を強行採決しました。そして安倍総理は喜び勇んで、アメリカに報告に行きました。あの時オバマ大統領は会ってくれなかったのです。なぜか。中国の習近平さんと会うのが忙しかったから。安部さんはオバマさんに誉めてもらおうとしてアメリカに行ったら、会ってもらえない。仕方がないから国連で演説をすることにした。ローマ法王が国連で演説しているとき、席がいっぱいになっています。安倍総理の演説は、日本のメディアは安倍総理を正面から写していたから、どういう雰囲気で演説が行われたかはわからない。でも世界のニュースを見ると、安倍総理の演説の様子がよくわかる。誰もいないじゃないですか。休憩中ですか?あれだけ国民世論に背を向けて、野党からもあれだけ批判されて、それでも無理をして強行採決して、誉めてもらおうとして行ったアメリカで、これでしょう。あの人はよく精神が持つなあと思いますよ。

 それではこれだけ無理して通した安保法制。もういっぺんおさらいしましょう。集団的自衛権、自衛という言葉がついていますから、国を守るための権利ではないかと誤解されている方が多いようです。集団的自衛権というのはこういうことです。X国という国がアメリカを攻撃した。その時にアメリカと軍事同盟を結んでいる日本は、アメリカを助けるためにX国を攻撃する。これが集団的自衛権です。日本のX国に対する攻撃、これが集団的自衛権です。X国は日本を攻撃しているわけではありません。X国は日本を攻撃する意思もありません。日本に対して敵意を抱いているわけではないX国に対して、日本が一方的に攻撃を加える。これが集団的自衛権です。

 でもそうはいっても、アメリカにはお世話になっているから仕方ないんじゃないか、アメリカを助けなければいけないんじゃないか、こういうお気楽な考えの人もいるでしょう。この、「X国からアメリカが攻撃を受けた場合」という前提、ここだけ聞くとアメリカが被害者のように聞こえます。これは国会の質問でも明らかになりましたけれど、アメリカが先にX国を攻撃した場合も含むのです。含むどころか、あれだけ強大な軍事力を持つアメリカを先制攻撃する国などあるわけがないのです。よく考えてください、戦後、20世紀の後半から21世紀まで、アメリカが攻撃を受けた戦争はありますか。アメリカが攻撃を受けたのは、最後は真珠湾攻撃ではないですか。あれ以降はすべて、アメリカが攻撃を仕掛けた戦争ではないですか。つまり、アメリカが攻撃を仕掛ける。日本はそれについていかなければならない。これが集団的自衛権です。

 例えばベトナム戦争。きっかけはトンキン湾事件ですね。トンキン湾に停泊するアメリカの船がベトナム軍から攻撃を受けた。だからアメリカの権益を守るためにベトナムを攻撃した。これがベトナム戦争の始まりです。ところがトンキン湾に浮かぶアメリカの船を攻撃したのは、実はアメリカの諜報機関CIAでしたね。アメリカの自作自演だったことが後に明らかになりました。

 イラク戦争はどうだったか。あれはイラクに大量破壊兵器があるからといって始まったのです。大量破壊兵器から人類を守るためにということで、アメリカがイラクに攻撃を仕掛けたのですね。大量破壊兵器は見つかりましたか?見つからないどころか、あれはアメリカ政府のでっち上げであったということが、後にアメリカ議会でも明らかにされました。つまりアメリカは、口実を見つけて、あるいはでっち上げて、他の国を攻撃してきた。攻撃される国から見れば、たまったものではないですよ。イラクは「大量破壊兵器を出せ。出さないと攻撃する」と言われても、持ってないものは出せるはずもないでしょう。そんな戦争に付き合わなければならないというのが、集団的自衛権です。

 ちなみに昨年の安保法制の国会審議の中で、安倍首相がこのことに関して質問を受けました。アメリカの議会ではイラクが大量破壊兵器を持っていなかった、でっち上げであったということは明らかになっています。日本は真っ先にイラク戦争を支持しましたからね。「支持したのは間違いではなかったのですか」と質問されたところ、安倍総理は「大量破壊兵器を持っていないことを証明できなかったイラクが悪いんです」と答えました。こんな無茶苦茶な理屈が通るのかということです。考えてください。こんな理屈で戦争を仕掛けられるのですよ。こんなならず者の国が他にあるでしょうか。

中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~①
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~②
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~④→12月18日更新
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑤→12月20日更新
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑥→12月22日更新

後藤とみかず
1968年生まれ、47歳。 福岡大学法学部卒、2002年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。