駆けつけ警護でやろうとしていること

 

 もうひとつ、これから自衛隊が担うことになる「駆けつけ警護」があります。駆けつけ警護というのは、例えば武装グループからNGOや国連職員、外国の部隊などが襲撃を受けた。この時に自衛隊が駆けつけて、NGOや外国の軍隊を警護するということです。安保法制成立後の自衛隊の駆けつけ警護適用の第一弾は、南スーダンです。本来は今年の2月に作戦が開始される予定でした。しかし安倍総理はこれを今年の9月に延期しました。何故か。もし作戦を開始して自衛隊員に死者が出たら、参議院選挙はどうなりますか。もし自衛隊員が南スーダンの、何の罪もない人を殺したらどうなりますか。あれほど強引に法案を通して、その適用は参議院選挙の後に先送りしました。ということは参議院選挙が終わった今から、南スーダンへの駆けつけ警護がスタートするわけです。

 それでは南スーダンは日本とどういう関係があるのかということです。南スーダンはエチオピアの西側にあって、首都はジュバです。あんまりお馴染みではない国ですね。この南スーダンに各国が軍隊を派遣しています。アメリカは6人派遣しています。一番多いのは中国で、1050人を派遣しています。ここを自衛隊が守るというのが安保法です。もうお分かりでしょう。自衛隊が守るのは中国の軍隊なのです。安保法を作る時に、あれほど中国の脅威だと煽っておいて、実際にやることは中国軍の警護です。そのために日本の自衛隊が南スーダンの兵隊を殺さなければならない。南スーダンの市民を殺さなければいけない。そんなことをしなければいけないのがこの安保法なのです。

しかも自衛隊が銃を向ける相手は少年兵です。南スーダンはとても新しい国で、ここの軍隊はまだ整備されていなくて、少年兵が多いのです。この少年兵は誘拐されてきた子供たちです。幼い頃に誘拐されてきて、学校にも行かされず、ずっと軍事訓練だけを受けてきた少年です。自衛隊が銃を向けるのはこの子たちなのです。国連は今、この子たちを親元に返そうという運動をしています。もう一回親元に返してきちんと教育を受けさせよう。それがこの国にとって必要なことではないか。国連はそういう活動をしています。憲法九条を持つ日本がやるべきことは、まさにそのことではないでしょうか。しかし日本は違う道を選択しました。この子たちに銃を向けるという選択をしました。

   中国はアフリカに進出したい。商売は上手だけれども戦争はしたくない。アメリカにどうかしてくれと頼んだら、「任せろ」といって日本に集団的自衛権を認めさせ、まず第1弾として南スーダンに派遣させる。もう無茶苦茶でしょう。この日本という国は、アメリカに沖縄を渡して、思いやり予算などと言ってキャッシュカードまで渡して、それなのにアメリカはまだまだ要求してくる。これが今の実情です。

 

尖閣諸島や南沙諸島の問題

 

 次に尖閣諸島の話をしましょう。尖閣は沖縄からも400km離れています。台湾から見えるほどの距離です。これは無人島です。これが何で問題になったかというと、これを問題にしたのは日本です。

 1972年に田中角栄さんが中国の周恩来さんと会って、日中平和友好条約を結びます。かつての自民党の政治家は、器の大きさがあるなと感心します。悪いこともしたのでしょうが、器が大きい。それに引きかえ今の自民党のセンセイ方はどうでしょうね。この時に、尖閣の問題は「棚上げ」にしようと約束します。こんな小さな岩のために、日中友好が台無しになってはいけない、そのためにこの問題は棚上げにしよう、と話し合ったわけです。この「棚上げ」というのは本当に大人の対応だなと思います。これには触れないでおこうという約束です。

 しかしこれに触れたのが石原慎太郎です。「東京都が買う」と言い始めた。なんであそこが東京都かと思いますが、東京都が買うというものだから、日本政府が慌てて国有化してしまった。この「棚上げ」という大人の姿勢を崩したのは日本なんですよ。これさえなければ、あそこはそれほど問題になる場所ではなかった。

 そんな話をすると、「じゃあ、南沙諸島は?」と言うわけです。南沙諸島は日本から遠く離れたマレーシア、ベトナム、フィリピンの沖ですからね。日本にとって直接関係ある場所じゃない。重箱の隅をつつくようなことをしてまで、中国と仲違いしたいのかということですよ。

ここは歴史的には、ずっと中国が支配してきて、近年になってアメリカの支配が及ぶようになってきたという場所です。世界史を勉強するとよくわかるのですが、ヨーロッパ諸国が植民地に対してとる対応と、柵封体制において宗主国である中国と周辺の藩属国の関係は違いますね。ヨーロッパの植民地は、アジアやアフリカを一方的に搾取するという関係ですが、中国では違いました。例えば琉球を思い描いてください。琉球は中国を宗主国にしています。琉球王朝は中国に対して毎年朝貢しているんですね。同じように、ベトナムも、カンボジアも、このあたりの国はみな中国に貢物をしているんです。たとえて言えば、親と子のような関係です。一方的な搾取という関係ではありません。中国は面子の国ですから、琉球が貢物をしてくると、それ以上の物を贈り返すのですね。沖縄に行って首里城の資料館を見るとよくわかりますね。中国はこれほどのプレゼントをしていたのかと思います。ですから中国と周辺の国の関係は、ヨーロッパの国々と植民地の関係と同じように考えるのはちょっと違うと思います。南沙諸島の問題もその名残だと思います。

ところがフィリピンがアメリカ領になって、戦後もアメリカの支配下に置かれる。そこでこの地域がアメリカの影響力が及ぶ海であり続けるのか、それとも歴史を遡らせて中国の影響下にするのか、それともこの周囲の新しい国々の影響下に置かれるのか、そういう新しい国際秩序ができつつあるというだけで、ここに日本が首を突っ込むべきではないだろうと思います。ここに日本が首を突っ込むことで、かえって国際紛争化してしまうから、日本は言うべきではない。私はそう思います。南沙諸島の問題を出すのは「ためにする議論」です。

中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~①
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~②
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~③
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑤→12月22日更新
中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~⑥→12月24日更新

後藤とみかず
1968年生まれ、47歳。 福岡大学法学部卒、2002年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。