市民連合ふくおかにおいて、毎月一回の頻度で市民向けの憲法講座が行われています。そこでの内容を、授業メモ、あるいは議事録という形で公開していきます。

 市民憲法講座第3回 「9条をキチンと読みましょう」 講師:横田耕一(憲法学者。九州大学名誉教授)

安全保障については、どうすればいいかと、憲法上のルールはどうなっているかとを、しっかりと分けて議論しないといけない。だから、「日本の安全保障は9条があるから大丈
夫」というのは解答になっていない。
 【ここで、30分ほど、参加者が各自の9条解釈を披瀝。その上で】
1 憲法条文の「解釈」(例:自衛戦力の保持は可能か否か)と「適用」(例:自衛隊は合憲か違憲か)を区別する。
2 解釈の必要性、解釈の作法 ( つまみ食いはダメ。憲法全体と矛盾なく解釈すること)
3 9条解釈の主たる論点
 1)「自衛権」の有無 → 「自衛権」の定義次第で決まる
   広義の「自衛権」(国をいろんな手段で守る権利)→ 否定論はない(制憲議会の吉田首相も肯定)
   問題は狭義の「自衛権(実力による防衛権)の行使」 → 解釈が分かれる。吉田首相は否定。
 2)1項
  「国際紛争を解決する手段としては」は限定か? → 自衛の武力行使は除外されるか?
   参照:パリ不戦条約 → 除外される ⇒ 自衛のための武力行使は可能(政府、過半数の憲法学者)
3) 2項  解釈の主たる争点は2項 (自民党改憲草案は1項は原則的に変えない)
 ① 「前項の目的を達するため」 → 1項の除外を強調=自衛のための戦力OK (芦田均)
                 → 1項全体を指す=自衛のための戦力NO (通説)
 ② 「交戦権」の否定 → 「戦う際の権利」= 武力行使NO (憲法学者の半数、一般人)
            → 「戦時国際法で認められた権利」×= 武力の行使OK(国際法学者、政府)
 ③ 「戦力」の否定 → 「対外行使を目的とする組織的実力」×= 結果として武力行使不可
             「自衛のための必要最小限度以上の実力」×=「防衛力」はOK(政府)
 ④ 「個別的自衛権の行使」 → 全面否定 or  自衛ならOK (政府、国民の過半?)
「集団的自衛権の行使」  → 個別的自衛権行使否定者は当然NO
             → 個別的自衛権行使肯定者でこちらは否定論者NO(かつての政府見解)
             → 限定的であれば可能OK(現在の内閣法制局、政府)
4)総合的に(13条も参照して)以下の解釈が可能であり、主張されている。
 ① 「個別的・集団的自衛権の行使」は一切ダメ
 ② 「個別的自衛権の行使」はOKだが、「集団的自衛権の行使」は一切ダメ
 ③ 「集団的自衛権の行使」も限定的ならOK
 ④ 「個別的・集団的自衛権の行使」はすべてOK
 ⑤ そもそも9条はマニフェスト(宣言)あるいは一義的に意味が定まっている「準則(ルール)ではなく、一定の方向を導く「原理」であっって、現実的には個別的自衛権の行使
を含むいろんな手段が考えられOK.
   (高柳賢三、長谷部恭男(「絶対平和主義は立憲主義に反する」)など憲法学者の一部)
 * 「安保法制(戦争法)」は違憲とする人はどういう憲法解釈で「違憲」と主張しているのか?
   私見:憲法は前文にも明らかなように武力による安全保障を全面否定
    個別的自衛権の行使はいいが、集団的自衛権の行使はだめという解釈は「一国平和主義」であり、
     前文の趣旨(「全世界の国民が平和的生存権を有する」、「自国のことのみに専念してはならない」)に
     反する上、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を維持しようと決意した」」として「武装による平和」を否定したことに反する。
5) 現在の国際情勢の下では、憲法の「絶対平和主義」は理想であり、他方「歯どめ」のため「個別的自衛権の行使」は認めるが、きちんと制限規定を加えるべきだとの改憲案が識
者から有力に主張されている。
 6) 国際社会における平和維持の努力を、国際法、平和政策の側面から説明。(集団安全保障、核抑止論など)
① 20世紀まで 無差別戦争観 →オランダにおいてハーグ条約(戦争をする際のルールを策定)・・同盟
  ② 第一次世界大戦の惨禍を受け国際連盟を設立、不十分であるが「集団安全保障」で平和を維持せんとする
  ③ パリ不戦条約で、侵略戦争(国際紛争解決の手段としての戦争)を放棄。抜け道多し。
  ④ 国際連合・・各国個別の武力行使を原則禁止(戦争の全面禁止)
 → 集団安全保障(国連軍による武力制裁、「中立」の否定)
     例外:自衛権(個別的・集団的)による武力行使、対旧敵国
 7) 戦後日本の安全保障と9条
  ① 警察予備隊・・近代戦争を戦えない(「戦力なき軍隊、戦車=「特車」」
  ② 「自衛のための必要最小限の実力である「防衛力」は9条の禁じる「戦力」ではない」
    (『防衛力』を超えるものが『戦力』!  その限度は周りの状況によって変わる。核兵器保持も可能)
  ③ 防衛政策は「核抑止論」(「相互確証破壊」MAD)
     ← 軍拡競争、偶発戦争
    日米安保条約で米国の「核の傘」 → 「安保の信頼性」を確保するため経済を含め米国に従属する必然性
   *「抑止論」に代わる説得ある政策の確立が緊急に必要

9条の読み方はいろいろあり、憲法学者の解釈も分かれている。今後、具体的な改憲論が出てきたときに「改憲反対」の主張だけでは対応できない。一人一人がしっかりと個人の9条
解釈をしていくことが、他者を説得するための前提。同時に、確固とした平和政策を各自が持つことが必要。