連載企画→中国は日本にとって本当に脅威なのか~日中関係と安保法制を考える~①
インタビュー企画第一弾→インタビュー企画「中国という隣人を身近に感じよう(前編)」

Q、お話を聞いていて、自分が持っていたイメージと全く違う一面が見えてきました。僕たち一般人は、テレビの報道やネットの情報を見て印象を形作っていると思います。

A、マスコミがいろいろ煽っているなと感じます。センセーショナルなものがやはり売れるのでしょう。例えばPM2.5について、ことさらに中国から飛来することが報じられますが、そもそも中国のPM2.5の問題が出る前から、日本国内の工場や自動車から大量のPM 2.5が排出されていたのに、政府は対策を取ってきませんでした。日本国内のPM2.5問題がぎりぎり表面化するか否かという時に、あたかも中国から飛来してくる毒ガスかのように報道され、それが一般的な認識になってしまったのです。九州においてPM2.5は中国からの飛来もありますが、多くは九州内の工場や排ガスによるものに加えて、阿蘇や桜島などの噴煙によるものがたくさん含まれています。また、関東になるとほとんど国産のPM2.5ばかりです。 

 Q、逆に、今のさまざまな日中間の問題に対して中国の人はどのように思っているのでしょうか

A、尖閣問題にしてもそうですが、日本人が感じているほど、興味がないという印象を受けます。

Q、「勝手に政府がやっている」くらいの認識なのでしょうか。

A、というより、「勝手に日本がやっている」だと思います。

Q、留学生の方々とそういったことを話されますか?

A、そういう話はしますが、やはり関心の低さを感じます。庶民レベルで感じるのは中華思想が根強く、ゆったり構えているということです。中国内の日系スーパー襲撃のニュースが日本で取り上げられていたことがありましたが、その当時現地にいた私からすると、そういう雰囲気すら感じませんでした。日本では同じ映像を繰り返し流しているので、中国全土でそのような事態が頻発しているように錯覚してしまうのでしょうね。

 
Q、どうも日本と中国の庶民の間にもズレがあり、その一端は報道のされ方にもあるように感じます。中国内で、日本に対する悪いニュースは流れるのでしょうか

A、中国ではほとんどそういうニュースは流れません。そもそも、中国で日本のニュースを大々的に取り上げるということがありません。たくさんある諸外国の一つ程度の扱われ方です。日本に関するものといえば抗日ドラマなどは流れます。日本で言うところの時代劇のようなものです。

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カンフーで日本兵を吹っ飛ばすアクションシーン。手榴弾で戦闘機を落としたりなど、娯楽性を強めたものが多く作られていた。

Q、抗日ドラマの存在はよく耳にします。普段接していらっしゃる留学生もそういったドラマをみて育ったはずなのに、なぜ日本に興味をもち交流をしようとしてくれているのでしょうか

A、日本製の工業製品や、アニメをみて育っているのが大きいでしょう。日本の工業製品を持つということは一定のステータスになっていますし、クレヨンしんちゃんはとても有名です。ガンダムやエヴァンゲリオンなどは常識レベルでしょう。また、チベットの小さな村で、マツダのぴかぴかの新車に乗っている若者がいましたが、その車にはシャア専用というマークがついていました。また、商品名などが日本語になっていることも多いです。日本の商品やお店の名前が英語になっていたらお洒落に感じることと同じことが、中国の方々にとっての日本語なのだろうと思います。日本的な要素が、一種のブランドとして受け入れられています。

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フロント部に「シャア専用」と印字されている。後方には英語で「char aznable」の文字も。

 

Q、同じものを見て育っているというのは交流の大きな糸口になりそうです。ここまでは民間のところについてお伺いしてきました。しかし、中国は共産党一党独裁の国であり、基本的にそこの意向によって進んでいく国です。中国の一般庶民が優しく良い人であろうとも、政府と民衆が切り離されている。そんな中で、中国の政府は信用できるのでしょうか。

A、中国は、基本的に日本や韓国のようにデモはできません。政府批判もできません。そういう意味で言論の自由が制限されているのは間違いない。公害に苦しむ人はたくさんおり、そういった人々を擁護する人権派弁護士が弾圧されたりしてしまいます。しかし、中国は共産主義国でありながら、資本主義よりも資本主義らしい独自の社会になっています。際どいバランスの上にあるいまの中国社会、少しでも体勢が崩れれば、支配構造が崩壊し、国がつぶれるという危機感のもとで、中国政府はかじ取りをしています。

Q、そのバランスを崩しかねないような大きなこと、武力侵攻などに踏み切るとは考えづらいということでしょうか。

A,そうです。一人っ子政策もあり、今の中国の子ども一人は両親と両祖父母までで6人の大人の思いを背負っています。これを日本との戦争で犠牲にしようものなら、さすがに政権を維持することはできないでしょう、今は、経済で危うい現状をごまかしています。政治に意識が向かないようにしているのです。日本の若者とは違う意味で、中国の若者は政治に無関心になるようにされています。逆に言えば、この経済成長が止まった時、中国がどうでるかは分からないと思います。しかし、中国が日本を攻めるということでいえば、メリットがないと思います。

Q、メリットとは

A,中国は基本的に資源も豊富で、自国で完結できる国です。少なからぬ犠牲を払ってまで、他国の領土を取る必要があるとは思えない。ただし、「データで読み解く中国の未来」の本の著者もいっていることですが、現場での一触即発が起こったら怖いと思っています。だから、煽ったり兆発したりしないことが必要です。また、中国は武力とは違う方法で世界に進出していく方が主流だと思っています。世界中どの国にいっても中華街がある。そもそもが商人気質な国なのです。

 

Q、お話を伺ってきて、報道やネット上などに溢れている軽はずみな「中国脅威論」やヘイトに流されず、交流することや、実際に足を運んで情報を集めて自分で考えることの大事さを感じています。どうすれば今後、日本と中国の交流が進み、仲良くしていけるのでしょうか。

A、そういったヘイトを煽る人々というのは、基本的に交流の場にでてくることはない。正直なところ、彼らにどうやって届けていけばいいのかというのは、僕もどうすればいいのか分かりません。しかし、日本も国際化は避けられません。今までのように、自分の生活圏に日本人しかいないということはなくなるでしょう。凝り固まった考えをしていたら、自分の将来をせばめてしまいます。今の子ども達の就職先の選択肢として中華系の外資系企業というのは普通のものになっていくでしょう。実利を考えれば、仲良くしていくしかない。引っ越しできないお隣り同士、仲良くするしかないでしょう。 

日本政府観光局のデータによると、日本を訪れる中国人観光客は年々増加しており、2016年には630万人、中国に限らなければ2400万人の外国人が日本に訪れている。とどまることなくグローバル化していく世界の中で、私たちが接することになっていくのは中国の人々に限らない。
ヘイトを煽るような軽薄な言説には同調せず、時には国家という大船を離れて、個人として接していくことが必要になっていくのかもしれない。

アイポス編集部
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