―2015年7月、今の政治や社会の在り方に疑問を持った福岡の若者たちが結成したFYM(Fukuoka YouthMovement)が今年3月をもって解散しました。今回は、彼ら彼女らの起こしたムーブメントについてこれまで長く運動に携わっている後藤弁護士ならではの視点でお話を聞きたいと思って伺いました。

後藤弁護士:大人世代から見ると若い世代が頑張っている姿が励みになりますし、応援したくなります。大学生たちから多少、無茶な…普通だったら難しいと思える提案があったとしても何とか実現させてあげたいという思いになります。

―後藤弁護士の大学時代もそういった大学生ならではな無茶な活動をした経験はありますか?

後藤弁護士:学生時代に政治的な活動をしていたわけではないのですが、有機農業などの環境問題を扱うサークルを運営していました。今から考えればかなり無茶な動きをしていたのですが、周囲の大人たちは本当に僕らの無茶によく答えてくれていました。

―畑を借りて活動されていらっしゃったとか

後藤弁護士:そうそう。講演会で知り合いになった大学の先生のところに相談したら、協力してもらえるお医者さんを紹介されて。とんとん拍子にそのお医者さんから「糸島で有機農業に取り組んでいる人がいるから相談してみて」と言われまして、その人のところに行くと「畑を貸すからやってみないか」と。それ以外にも、地域で食品問題をテーマに扱う講演会を開催したいと思って一軒一軒、会場を探しました。手あたり次第に聞いて回ったところ、ある保育園が会場を提供してくれて、それからその保育園で定期的に講演会を開催できるようになりました。今から考えればとても無茶だったなと思うんですけどね。そういう無茶をやれる世代だなと思います。

―後藤弁護士も大学生時代に大人の方々から力を借りながら色々な取組をされていたのですね。実際、FYMの運動も若者だけでは達成できないこともあったのかもしれません。後藤弁護士は、大人世代として彼らの活動をどういう風に意識して支えていましたか?

後藤弁護士:やはり、若者団体にとって同世代に対する発信力はあっても社会一般に対する発信力が弱い部分もあったので、そこは活動を通して培った人脈を広く持っている僕らがサポートするようにしていました。自分が繋がりを持っているところに情報を提供したり、みんなで応援しに行こうと呼び掛けたりですね。あと、僕は弁護士なのでデモの最中などにトラブルがあれば対処しようという意識を持って参加していました。

―FYMメンバーもデモ等の取組で大人世代の存在が手助けになったと話していました。

後藤弁護士:若いというだけで文句をつけてくる人もいますので、僕ら大人世代が守らなければいけないという意識はありました。

―SEALDsも含めて若者団体を応援する声も広がった反面、批判の声もありました。しかし、彼ら彼女らの活動を目撃した多くの人たちが何らかのスタンスを取らざるを得なかったくらい大きな影響を与えたと考えています。後藤弁護士から見て、彼ら彼女らの運動前後で変わったことは何だと考えていますか?

後藤弁護士:まず、運動の手法が変わったと思いますね。旧来型の学生運動や安保闘争のような手法は今の時代からすると社会から受け入れられにくいスタイルだと思います。対話ではなく主張を前面に出して絶叫するようなスタイルは、一般市民からすると突然、心構えがないまま主張を浴びせられるような感覚になります。そして、いきなり主張を浴びせられた一般市民はその瞬間に拒絶するでしょう。これは世代にもよるのかもしれませんが、少なくとも僕ら40代の世代は旧来型の運動に慣れていません。若者たちはそうした旧来型とは異なる手法でスタイリッシュに訴える運動を起こしました。そうすると、一般市民は何を訴えているか聞いてみようという気になる、ちょっと立ち止まって見てみようという気になる…それはすごく革新的なことだと思いますね。

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それと、僕が違和感を持つのはデモや集会で労働組合の幟を掲げてくる方が多いことです。「安保法廃止」を目的に掲げているのに組合の幟を掲げることに市民にとって何のアピールになるのか。組合の幟を掲げることでデモや集会が組合活動であるかのような印象を強くしてしまって逆効果なのではないかと思います。そうではなく、FYMのように市民全体に訴えかけたいメッセージを前面にアピールする手法が市民の心に響くと思っています。

―FYMやSEALDsの運動は、ある種、旧来型の運動に対する問題提起という側面もあったと思います。彼ら彼女らが運動を始める前から後藤弁護士としては旧来型の運動に対して違和感を持っていたのですか。

後藤弁護士
:かなり違和感はありましたね。


―旧来型の運動というと、どうしても動員が多くなってしまい、活動の一環としてデモや集会を行うことが目的になっている側面があったと思います。FYMやSEALDsの運動は「安保法案を通過させない」という目的があって、目的を達成する手段としてデモや集会を使ったという印象ですよね。旧来型の運動とは違う文脈で出てきた運動だったのではないかと思います。


後藤弁護士
:彼ら彼女らからすると自分たちがやりたい運動をやったのだと思います。それが結果的に旧来型の運動とは手法が違っていたのでしょう。旧来型の運動とは出発点が違ったのが良い部分でもあったのではないでしょうか。FYMが主催するデモや集会では「団体名が記載されている幟は遠慮してください」とか、「今日はこういう主張を目的とした集会です」ということを周知徹底していましたよね。

―後藤弁護士から見て、旧来型よりFYMのデモの方が参加しやすい面がありましたか?

後藤弁護士:それは圧倒的にありましたね。先日、とある講演会でサウンドデモの映像を紹介しましたが、旧来型の運動をしている方々にサウンドデモの様子を観てほしいと思って紹介したんですよ。新しいスタイルのデモは、沿道の人から送られてくる視線が違いますよね。通りかかった人が一緒についてくるでしょう?一概に旧来型の運動を否定することはできませんが、そういう姿を是非観てほしかったんですよね。

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―後藤弁護士の周囲にいる旧来型の運動をしている人は、若者が行っているデモや集会のスタイルについてどういった認識を持っていますか?

後藤弁護士:僕の同世代で旧来型の運動をしてきた労働組合の人なんかは、若者たちの運動に触発されて市民に受け入れられるようなかたちに運動のスタイルを変えてみようという動きはあるみたいです。ただ、その流れで懸念していることは運動の中で若者が消耗されてしまうことです。こうした政治的な、あるいは社会的な運動に参加する若者って圧倒的に少ないので、こぞって若者を使おうとしてしまう。その結果、若者が消耗してしまって疲れてしまうという側面があります。

―SEALDsを始めとした若者団体の活動はセンセーショナルなものとして大きな運動に発展しましたが、その一方で様々なところから声が掛かって対応を求められたために疲弊してしまったという側面があると思います。

後藤弁護士:“若い”というだけで声を掛けて、呼ぶときは旧来型の枠にはめ込もうとするわけでしょう。それでは配慮が無さすぎますね。僕ら大人世代に必要なのは若者たちがやっていることを支えることであって、若者たちを旧来型の運動に取り込むのは彼ら彼女らの芽を摘んでしまうことになります。昨年末、象徴的なことがあったのは、辺野古不当判決やオスプレイ墜落について路上ライブ形式で訴えていたところ、沖縄出身の若者が飛び込みでラップを歌い出して盛り上がったことがありました。彼は福岡で沖縄問題についてほとんど話題にのぼらないことにモヤモヤした気持ちがあったようで、それで飛び込み参加したそうです。その日の運動が終わった途端に、年配の方々が「次はこれに来てよ」とか「今度はこれがあるから来なさい」と口々に誘っていたんです。若者だからといって初対面でこれから信頼関係を築いていく人に対して「これに来なさい」というのは乱暴だと思うんですね。

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―後藤弁護士の世代は“60年安保”や“70年安保”が過ぎた後の、ある意味、運動が盛んではない世代であるというお話がありました。近年、若者の政治的無関心が問題として取り上げられますが、後藤弁護士が学生時代の時も若者の政治的無関心は問題としてあったのでしょうか?また、その当時と比べて政治的無関心が進行していると思いますか?

後藤弁護士:なかなか世代で一括りにできない部分もありますが、今の若者は社会について真剣に考えている人が多いと思います。今の若者は自分たちの身をもって政治の失敗のツケを背負わされています。大学を卒業しても就職先がないとか、社会に出ても奨学金を返済しなければならない…将来が安泰ではないという感覚が付きまとう。初めから前世代の借金を背負わされているといった社会の矛盾を体験してきている世代だと思います。勿論、どの世代も多かれ少なかれ社会の矛盾を感じているとは思いますが、今の若い世代は自分たちの考えを発信する方法が旧来型とは異なるので前の世代に届いていないのだと思います。

―今後、FYMメンバーや若い世代に期待することはなんでしょうか?

後藤弁護士:僕らと違って彼ら彼女らが大学生である期間は一瞬ですよね。仕方ないことですが、一年単位で活動している世代が交代してしまうので運動体としては弱い側面があります。また、社会人になれば大学生のときは言えたことも言いづらくなることもあるでしょう。学生たちが社会人になってパタリと活動に顔を出さなくなるというのは仕方ないことだと思います。それでも嬉しいのは、ここ福岡で活動していた学生たちが社会に情報発信する仕事に就職したり、社会問題などに対する知識をより深めるために大学院に進学しており、市民を啓蒙する道に進んでいる人が多いことです。彼ら彼女らが社会で活躍していくうえでFYMの活動が下地になったのではないでしょうか。

アイポス編集部
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