都議選最終日、安倍首相は秋葉原の街頭で、自らを批判する人たちに向けて、こう叫んだ。
 
 「こんな人たちに、私たちは負けるわけにはいかないんです」

 安倍政権は、特定秘密保護法や安保法制、「共謀罪」法を強行採決。それでいて、森友・加計学園問題について説明責任を果たそうとしていない。こういった状況で、国民が安倍政権を信頼するわけがない。安倍首相が都議選の応援演説を始めると、「安倍はやめろ」のコールが湧き上がった。そのコールに対して、多様な意見に耳を傾けるべき立場の首相が、「こんな人たち」と表現し、国民を「敵」と「味方」に二分するような発言を行ったのである。国民の怒りの声に対して真摯に耳を傾けようとせず、「こんな人たち」と吐き捨ててきた結果、都議選での自民党大敗、内閣支持率の急落に結びついたのではないだろうか。

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■「こんな人たち」ってどんな人たち?

安倍首相の言う「こんな人たち」とは、一体、どんな人たちなのか?

7月9日、全国各地で「安倍政権に退陣を求める緊急デモ」が開催され、国民による怒りの声が上がった。福岡においても、準備期間が1週間しかなかったにも関わらず、約200人が集まり、「安倍はやめろ」のコールが福岡の街に響いた。安倍首相は、デモの参加者を「こんな人たち」として、一部の過激な人が政権を批判しているのだとレッテル張りするだろう。果たして、「こんな人たち」とはどんな人たちなのだろうか?

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「安倍政権に退陣を求める緊急デモ」に参加した20代の若者は、デモに参加した理由について「全方面に無責任な安倍政権、どこを向いているのか分からない政治に対して声を上げたかった」と言う。

「九州北部豪雨の時も、安倍首相はG20後の北欧訪問を続け、帰国しなかった。稲田朋美前防衛相も防衛省から外出していて…デモ中も『被災地対策しない総理はいらない』というコールが上がった」

被災地で不安や心配が募るなか、災害対応をそっちのけで緊急性の低い北欧訪問を続けた安倍首相。外遊を切り上げて帰国しなかったことについて、外遊中に国会で開催した閉会中審査に出席したくなかったという思惑も透けて見える。加計学園問題の責任追及を逃れることを最優先にし、災害対応を怠るような安倍政権に対して「全方面に無責任」、「どこを向いているのか分からない政治」と感じるのは、当然だろう。

「徐々にデモの主張が変わってきたと思う。これまで、戦争や原発、改憲など政策一つひとつに反対の声を上げるっていうのは見てきたが、それが『もう安倍政権を終わらせなければいけない』という主張に集約されてきた」

戦争反対、原発反対、改憲反対…これまで、安倍政権が蹂躙してきた人々の怒りの声が、「安倍やめろ」のコールに集約されているのだ。更に、デモに参加した若者は言う。

「初めて、安倍政権が終わりに近づいていることを肌で感じた」

これまで、一定の支持率を保ってきた安倍政権だったが、人々の中で安倍政権への不信感が確実に広がってきている。

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■「こんな人たち」発言に「国政の私物化」を見る

 本来、あらゆる国民の生活を預かる内閣総理大臣という立場であれば、批判の声に対しても謙虚に受けとめ自身を省みるべきで、決して国民の声を軽んじるべきではない。「こんな人たち」という発言には、安倍首相の国民を「敵」と「味方」に二分した考え方が色濃く反映されているのではないだろうか。

特定秘密保護法や安保法制、「共謀罪」法に反対する国民や森友・加計学園問題を追及する野党議員、すなわち安倍首相自身の方針に反対する人々や批判する人々を「敵」としてレッテルを貼り、「敵」との対決姿勢を見せることで分かりやすい対立構造を作り上げている。本来、尊重すべき批判の声を「敵」の妨害という枠に落とし込み、無視を決め込んでいる。そこに安倍首相による内閣総理大臣としての立場ではない、もっと個人的な感情で政治を行っているのではないかという疑念が生まれる。

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 その一方で、安倍首相は自身の「味方」は、“お友達”として手厚く優遇しているようである。しかし、相次ぐ失言の末に辞任した稲田朋美前防衛大臣、「総理のご意向」が疑われる加計学園の獣医学部新設問題では加計理事長や萩生田光一内閣官房副長官…これまで優遇していた“お友達”の問題で安倍政権は窮地に立たされている。

安倍首相は、国民の怒りの声を「敵」の声として軽んじ、蔑ろにしながら、自分の“お友達”には甘い汁を吸わせ続けてきた。確かに、人間誰しも自分に批判的な人よりも自分に近しい人を優遇してしまうというのは、往々にしてある。が、耳の痛い話でも受け止め、自身を顧みなければならないことを皆、知っている。内閣総理大臣という責任のある立場では、なおさらである。安倍首相は、それを怠り、自身の責任ある立場を忘れて個人感情に基づいた「国政の私物化」を推し進めてきた結果が、分かりやすく都議選での自民党大敗という形で現れたのだろう。

アイポス編集部
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