<働き方改革>

 

9月28日召集の臨時国会に提出され、来年4月の施行を目指して議論される予定だった「働き方改革関連法案」。関連法案には、労働基準法、労働者派遣法、労働契約法など8本の法律の改正案が盛り込まれています。さまざまな問題が指摘されていますが、この法案が成立すれば私たちの労働のあり方が根本から変わってしまうかもしれません。このうち、特に問題とされる3つの制度を見ていきたいと思います。

■高度プロフェッショナル制度の導入で残業代ゼロに?
■“ブラック企業にエサを与える制度”が拡大?
■過労死ラインまでの残業が合法化?

まず、一定収入の専門職を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度」(高プロ)
労働時間は休憩時間を除き、原則「1日8時間、かつ1週間40時間まで」と決められています。ただし、あらかじめ会社が労働者側と結ぶ協定を労働基準監督署に届け出ていれば、業務上の「やむを得ない場合に限り」ということで残業が認められます。会社など雇用主は、時間外労働をさせた場合には、労働者に1時間当たり2割5分以上の賃金を支払わなければなりません。しかし、「高プロ」が導入され、労働時間規制の適用から除外されてしまえば「残業」という概念がなくなってしまいます。法案が「残業代ゼロ法案」と指摘されるゆえんです。一定収入の専門職が対象とされていますが、年収の条件が変更される可能性があり、該当する職業も明確に定められているわけではありません。拡大解釈される恐れがあり、私たちに関係のない話ではありません。

“2007年に第1次安倍政権が導入しようとして断念した『ホワイトカラーエグゼンプション』は高収入の人を労働時間規制からはずす制度でしたが、2005年に経団連が出した提言では“年収400万円以上”が対象とされていました。今回の法案も、こうした経済界の意向を受けて今後、この水準の人まで広がるおそれはあります”

二つ目は、何時間働いたとしても一定時間しか働いたことにならない裁量労働制」の営業職への拡大です。「裁量労働制」は、労働者と雇用主で定めた一定時間を労働時間とし、それ以上働いたとしても労働時間とみなさず、残業代も支払われません。例えば、労働者と雇い主で「1日の労働時間は8時間」とみなす協定を結んだ場合、実際に働いた時間が6時間であろうが14時間であろうが、その日の労働時間は8時間として扱われます。ただでさえ長時間労働が社会問題化する昨今、個人の判断で仕事を早く切り上げられる人はごく少数でしょう。これには収入の条件がなく、年収が低くても該当することになります。「裁量労働制」は、残業代を抑えて長時間労働を可能にする制度であり、こちらも残業代ゼロ法案」と指摘されています。

“ブラック企業対策弁護団では、裁量労働制の対象拡大を、「ブラック企業に栄養を与える制度」として批判しています”

三つ目は、残業時間の上限設定による長時間労働の是正です。規制の中身は以下のとおりです。

“•1間の時間外労働の上限は720時間(月平均60時間)
•2~6月平均の時間外労働の上限は月80時間
•1ヶ月の時間外労働の上限は月100時間未満
•上限規制に違反した企業には罰則を科す”

「高プロ」の導入や「裁量労働制」の拡大が労働規制を緩和するのに対し、残業時間の上限を設けて規制を強化する。一見すると聞こえはいいですが、「過労死ライン」とされる月100時間の残業を合法化し、逆に長時間労働にお墨付きを与える制度となっています。1ヶ月100時間という規制では、1日あたり平均5時間も残業させられることになります。
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“働き方改革の理念は長時間労働をなくすこと。しかし議論の結果、上限を月80時間や100時間と定めた残業規制は、高度プロフェッショナル制度には適用されません。片方では規制しますと言いながら、もう片方ではリミッターをはずすことをやっている。これでは改革になっていません”

改めて様々な問題がある「働き方改革関連法案」ですが、安倍政権は8本の法律を一本化し一括で審議しようとしています。複数の法案をまとめた「安保法制」の採決時と同様、審議が十分になされずに成立するのではないかとの懸念もあります。「働き方改革関連法案」は誰のための法案なのでしょうか。どうも労働者の視点が欠けているように思えてならないのです。

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アイポス編集部
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