<ブラック企業問題>

2013年の流行語大賞トップ10入りした「アベノミクス」や「特定秘密保護法」。時を同じくして受賞したのが「ブラック企業」でした。最近では頻繁に耳にするようにもなった「ブラック企業」。その実態と現状はどうなっているのでしょうか。

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■そもそもブラック企業とは?

長時間労働や残業代の未払い、劣悪な労働環境、社員の使い捨て、パワハラやセクハラ…。様々な問題がありますが、実は「ブラック企業」に関するはっきりとした定義は定められていません。厚生労働省は、あくまで「ブラック企業」の一般的な特徴として、以下のようなものを挙げています。

・労働者に極端な長時間労働やノルマを課す
・ 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
・このような条件下で労働者に対し過度の選別を行う

■増加するブラック企業?

「ブラック企業」の実態を知る上で、ひとつの物差しとなるのが過労死・過労自殺です。「ブラック企業」が流行語に選ばれ、世間の注目を集めてはや4年。しかし、今なお日本には長時間労働がはびこっているのが現状です。長時間労働の容認は、それに伴う過労死も容認することであり、働き手の命を軽視しているともいえます。

厚生労働省の統計データによると、2016年度に過労死・過労自殺で命を落とした人は459人にも上ります。毎日1人以上が過労死・過労自殺で命を奪われているのです。

また、労働者の病気やけがが業務に起因するかどうかを、労働時間や勤務形態、仕事中に起きた出来事などから各地の労働基準監督署が総合的に判断した上で認定する“労災”。この労災について、過労死等の労災請求件数は2016年度に2,411件と昨年度より101件増えて過去最多の件数となっています。

安倍政権が発足した2012年度を起点とすると、労災請求件数は毎年増え続けています。2016年度は12年度比で312件も増えています。日本では、1日に6人以上が過労等により脳・心臓疾患、精神障害の労災となっているわけです。

とりわけ、過労を主な原因としてうつ病など「心の病」を患う人が増加しています。2016年度、「心の病」を発症して労災を請求した人は1586人、認定された人が498人と過去最多を更新しています。年代別では、20代の増加が目立っているのが特徴です。

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■ブラック企業をなくすために“真の働き方改革”を

「ブラック企業」で働く人に対して、「そんなに苦しいなら仕事辞めればいいじゃん」とか「入社した本人の責任でしょ」という指摘もありますが、そんな単純な話ではないんです。

もちろん、働き手にとって自分自身を守るために仕事を辞めるという選択も必要ですし、その権利もあります。また、入社した企業が「ブラック企業」とわかった場合には、労働組合や公的機関などを通じて不当な働かせ方を止めさせることも大事です。

しかし、長時間労働、休日労働など会社から命令される場合のほかにも、“暗黙の強制”という形で無言の圧力がかかり、そうせざるを得ない雰囲気がつくられるケースもあります。
 どんなに苦しくても、「辞める」と言い出せない雰囲気が職場内で醸成されていれば簡単に仕事を辞めることなんてできません。ましてや今のご時勢、すぐにいい職が見つかる保障もありません。結婚を考えている人や家庭を持っている人は、なおさら仕事を辞めるのが難しいと思います。

“一見、使い捨てにするブラック企業と「辞めさせない企業」は真逆の存在のように見えるが、じつは「辞めさせない会社」も利用価値のない人は退職に追い込むが、利用価値のある人は潰れるまでとことん働かせるという意味では、同じブラック企業なのである”

真面目に仕事に取り組む人ほど過重労働に陥りやすいと言われています。自覚がないまま働き続け、脳・心臓疾患などで突然死するケースが後を絶ちません。

また、過労は体の疾患だけにとどまらず心をも蝕んでいきます。うつ病を発症した場合、「仕事を辞める」という正常な判断さえ奪われてしまうかもしれません。昨年度に過労死・過労自殺で亡くなった459人もの尊い命。「死なないと辞められない」という状況にまで追い詰められていたのではないでしょうか。

私たちの世代である20~30代は、過労死よりも過労自殺の方が多くなっています。過労死や過労自殺をなくすために、「“適切な”労働時間の上限規制の法定化」など“真の働き方改革”が実現されることを望みます。

ブラック企業を流行にさせてはなりません。「365日24時間死ぬまで働け!」(居酒屋チェーン大手ワタミ理念集)といった言葉がまかり通る社会は異常です。「ブラック企業」問題は、私たちの生活から切り離すことのできない深刻な問題となっています。

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アイポス編集部
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